くじゅうの高原をすり抜ける、すずしい風。九州でもっとも多くの人が集まるくじゅう連山は、初心者でも歩きやすい場所。季節ごとにうっとりするような絶景に包まれます。ゆっくりと自分のペースで登れば、日本百名山の頂上に立つことだって可能です。「いつか登ってみたい」と思っていたなら、きっと今がはじめどき。「はじめてのくじゅう」へ足を運んでみませんか。
「はじめてのくじゅう」へ初心者でも登りやすい2コースをご紹介します。
corse1 : くじゅう連山の主峰をゆっくり目指ざすコース。
corse2 : 登頂を目指さないのんびりハイクコース。
course 1
牧ノ戸峠登山口から、久住分かれ・久住山へ
「くじゅうで一番有名な山は?」と聞かれたら、「久住山」と答える人が多いでしょう。決して楽ではないけれど、牧ノ戸峠登山口からのピストンが王道のコース。自分のペースで大地を踏み締め、くじゅう連山の主峰をゆっくり目指そう。
Climbing plan
久住山へ日帰りで登るメジャーなルート。牧ノ戸峠登山口を出発し、第一展望所を経て沓掛山へ。まっすぐ登山道を進み、西千里浜を久住分かれに向かって進む。久住分かれから久住山方面へ向かって岩場を登り、山頂へ到着。帰りは同じ道を辿ります。
牧ノ戸峠登山口
[MAKINOTOTOUGE-TOZANGUCHI]
主峰・久住山へ入るための主要な登山口
くじゅう連山の周囲に点在する登山口の中で、一番有名な「牧ノ戸峠登山口」。阿蘇と湯布院を繋ぐやまなみハイウェイ沿いにあるためアクセス良好で、九州内外のハイカーが訪れます。
人気の登山口のため、ミヤマキリシマや紅葉シーズンは早朝から駐車場が満車になる日も少なくありません。車が停められないと山行計画も変えざるを得ないので、注意が必要です。
駐車場には国土交通省のリアルタイムカメラが設置されているので、ぜひ山行前にチェックしましょう。
山群の主峰・久住山には、標高1,330mからアタックできるので、初心者でも比較的チャレンジしやすい
敷地内には売店があり、お土産や登山バッジが購入できます
下山後は、ソフトクリームや団子を購入してお腹を満たしましょう
さあ、いよいよスタート!
最初の登りは焦らず急がず、目的地に向け笑顔で出発!
名峰、久住山を目指して−−。牧ノ戸峠をスタートし、舗装された急傾斜に足を踏み入れます。登山届けを記入するポストがあるので、十分な山行計画を立てて山に入りましょう。
「牧ノ戸峠登山口からの登りは、最初が一番きつい」と言われることが多く、ペースが早いとすぐに息が上がってしまうので、意識してゆっくりと登りましょう。
登山届けを記入するポスト。十分な山行計画を立てて山に入ろう
壮大な景色が見渡せる第一展望台に到着
20分ほど登ると、見晴らしのいい第一展望所にたどり着きます。道が整備されているので、観光客も多く、東屋でお茶休憩をしたり写真を撮るなど、くつろげる場所になっています。空気が澄んでいたら由布岳方面が見渡せ、これから向かう未踏の地に期待が膨らむはず。
心が洗われたようなリラックスした気分が味わえます
第一展望所で壮大な景色を眺め、写真に収めたらさらに進みましょう。しばらく歩くとコンクリート道が終わり登山道に変わります。さらに上ると木道の階段が現れます。息を整えてゆっくり着実に進みましょう。
勾配の強い木の階段。ゆっくり一歩一歩確実に
沓掛山山頂から、山々を見渡そう
山頂からは進行方向の登山道がよく見渡せ、今回の目的地である久住山も確認できます。沓掛山の山頂は岩が積み重なっていて狭いので、譲り合って山頂に立ちましょう。
沓掛山を過ぎると、大きな岩を越えながら歩く箇所や木道の階段があります。段差のある下りですので慎重に注意しながら進みましょう。
岩場が終わると高低差が少なくなり、快適なトレッキングルートが目の前に開けてきます。それに伴い、足取りも軽くなってくるはず。早る気持ちを抑えて、休憩を取りながら歩みを進めましょう。
A:沓掛山
標高1,503m。狭く岩が重なり合っているので気を付けて
今回の目的地である久住山を確認
はじめての久住山へ向け、爽快に歩みを進めよう
階段を下りて進むと、やがて扇ヶ鼻分岐が現れます。
扇ヶ鼻はミヤマキリシマの名所で、春は一面ピンクの絨毯のようになる素敵な山。ぜひシーズン中に訪れてみましょう。
ここの分岐を久住分かれに向かってまっすぐ進み、西千里浜を目指します。西千里浜の入口には星生山への分岐がありますが、ここもまっすぐ歩みましょう。
しばらくガレ場が続きます
歩きやすい一本道。平坦な道が続く
青々とした星生山を左手に眺めながら、1kmほど平坦な道のりを爽快に進みます。岩場である星生崎(ほっしょうざき)直下は、足を取られないように気をつけながら下りましょう。
緑の中の一本道。足取りも軽く進みます
B:久住分かれ
目の前に見える、避難小屋のある窪地が久住分かれです。
バイオトイレは冬季の間は凍結防止のため閉鎖となり、携帯トイレ専用ブースが設置されています。携帯トイレを持参しましょう。
避難小屋でランチを食べることも出来ます
いざ久住山へ
ここで一息ついたら、さっそく今回の目的地、久住山へ!
山頂までの登りはゴツゴツした岩が多く、踏み込むとザラッと滑ることがあるので、しっかり踏みしめながら登ります。
標識に沿って進めば大丈夫
山頂までの道は、ゴツゴツした岩が多いので、足元に気を付けて進みましょう。あともう少し!
岩場は滑らないよう慎重に
くじゅう連山の主峰へ到着!
ようやく山頂へたどり着くと、そこには360度パノラマの絶景が待っています。瀬の本高原や阿蘇方面へ続く草原が見渡せ、三俣山や大船山方面も見渡すことができ、くじゅう連山の雄大さを感じ取ることができるはずです。
C:久住山
山頂へ到着! にっこり笑って記念撮影
山頂は混み合うので、少し離れた岩の上に座って休憩
山頂でランチタイム♪
POINT
時間と体力に余裕があれば、天狗ヶ城・中岳まで歩こう
久住山でゴールし、ゆっくりランチ休憩を取ったら、あとは同じコースを戻る今回の行程。でも「まだまだ物足りない!」という体力の有り余った方は、久住山から縦走しやすい天狗ヶ城や中岳、御池に立ち寄ってみて。下山予定時刻は余裕を持って設定しておきましょう。
天狗ヶ城(標高1,780m)。御池や中岳を間近に望むことができる
天狗ヶ城までは岩がゴツゴツしたザレ場を登って向かう
中岳付近にある“御池”。九重山の火口跡に水を湛える火口湖
くじゅう連山の最高峰、中岳(1,791m)にて。眺望も抜群
牧ノ戸峠登山口からのピストンが王道のコース。自分のペースで大地を踏み締め、目指したくじゅう連山の主峰。くじゅう連山の雄大さを感じ取ることができましたか?
corcse2では、登頂を目指さないおススメの「のんびりハイク」コースをご紹介します。
その前に、プロのカメラマンにcourse1の撮影ポイントをきいたのでチェックして行ってくださいね。
① 沓掛山から見た紅葉の稜線
沓掛山の山頂から、今から歩いていく稜線が紅葉に染まった様子が眺められます(Shiori)
② 久住分かれから見た久住山
避難小屋付近から久住山の全貌を眺望できます。刻々と変化する山肌につい見入ってしまいます。(辻本光星)
③ 星生山から見下ろす風景
星生山山頂から、斜光に照らされた三僕山と硫黄山が見下ろせます。どの季節も美しい場所です(Atsushi)
course 2
長者原登山口から、坊がつる・法華院温泉へ
山小屋あり、湿原あり。はじめてくじゅう連山を歩くなら、登頂を目指さないのんびりハイクがおすすめ。長者原から法華院温泉山荘をめざすルートは、ノーピークだけど見どころがたくさん詰まっています。くじゅうの名所めぐりに出かけましょう。
Climbing plan
法華院温泉山荘のランチを目的とした、初心者でもチャレンジしやすいトレッキングルート。長者原登山口を出発し、タデ原湿原、雨ヶ池を通り、坊がつるを経由します。ピークを踏まないためアップダウンが少なく歩きやすいコース。帰りは同じ道を辿ります。
長者原登山口
[CHOJABARU-TOZANGUCHI]
タデ原湿原など貴重な自然が残る場所
牧ノ戸峠と人気を二分する登山口、長者原(ちょうじゃばる)。標高1,030m、やまなみハイウェイ沿いに広がる飯田高原(はんだこうげん)の中心地域です。夏は涼しく、行楽シーズンは多くの観光客で賑わいます。
敷地内に長者原ビジターセンターがあり、その裏手には、ラムサール条約登録湿原である「タデ原湿原」が広がっています。マスガヤ、ミズゴケなど貴重な湿原植物が群生し、野焼きにより湿原の維持が継続されてきた貴重な場所です。時間があれば長者原ビジターセンターに立ち寄り、山の成り立ちや植生を学びましょう。
タデ原湿原から雨ヶ池を経由して歩くと、坊がつる湿原や法華院温泉山荘方面へと道が続いています。ヘルスセンター横には、くじゅうのガイド犬・平治の像があります。
九重連山のひとつ、平治(ひじ)岳にちなんで、つけられました
タデ原湿原、雨ヶ池を抜け、憧れの山小屋を目指そう!
「山小屋」と聞いただけで胸が躍る。そんな人は、くじゅう連山のど真ん中にある「法華院温泉山荘」を目指して、ノーピークで歩いてみてはいかがでしょう。
法華院温泉山荘は標高1,303mの高所にあり、日帰りでもホカホカの温泉とランチが利用できます。
それだけで、片道約2時間の道のりを歩くモチベーションがふつふつと沸いてくるはず。
今回は山頂を踏みませんが、長者原登山口から法華院温泉までの間には名所がたくさん! 高低差も少なく、くじゅう連山の名峰に囲まれた中心部まで歩けるのがこのルートの醍醐味です。
長者原からスタート!
スタート地点には、国内最大級の面積を持つタデ原湿原が広がり、シーズン中はサクラソウやヒゴタイなど可憐な高原植物を見ることができます。タデ原のみを周回する観光客も多く、澄んだ空気に包まれた高原散策は気持ちよく爽やかな気分に包まれます。
長者原からスタートです
くじゅうの高原に咲く“ヒゴタイ”。ルリ色の球状が可愛らしい
自然いっぱい! タデ原の木道散策
タデ原湿原は面積約38ha、標高約1,000mに位置する国内最大級の中間湿原です。マスガヤ、ミズゴケなど貴重な湿原植物が群生し、野焼きにより湿原の維持が継続されてきた貴重な場所です。
F:タデ原
この木道が映えますよね
タデ原湿原周辺の森の中はバリアフリーではないものの、起伏はほとんどなく、ミズナラやブナなどの落葉広葉樹の木漏れ日の中を歩きます。一面ミズゴケに覆われた場所もあり、変化に富んだ森の中を散策できます。
秋は赤や黄色に染まる樹木のトンネルとなります。所々ベンチが配置されているので、休憩しながらゆっくり進みましょう。
木漏れ日の中、ゆっくり進みましょう
視界が開けた場所から坊がつる方面を見渡す
しばらく歩くと雨ヶ池が現れます。この一帯には平坦な木道が広がり、この先に坊がつるキャンプ場があるため、大きなザックを背負った登山者とすれ違うこともしばしば。九州の登山道ではなかなか見られない光景が広がり、気分も高揚してきますね。
G:雨ヶ池
「雨ヶ池」という名ですが水がないことも多く、雨が降り続くと水が溜まります
この日は水は溜まっていない状態です
平坦な木道を進みます
坊がつるでカフェタイム、法華院温泉でごほうびランチ
雨ヶ池をあとにし、アセビの樹林帯を抜けながら進むと緑の草原、坊がつるが目の前に開けてきます。渡渉ポイントは気をつけながら渡りましょう。
坊がつる方面が目の前に開けてきた
足元に気を付けて!
一面に広がる緑の草原、坊がつる
坊がつるは、くじゅう連山唯一のキャンプ地。高い山々に囲まれた広い盆地のような原っぱにはたくさんの貴重な植物が自生しています。四季を通してキャンプする人が絶えず、九州の山のオアシスと呼ばれています。
H:坊がつる
山の中の炊事場やトイレなど備えてあるキャンプサイト
到着したら椅子を広げ、カフェタイムにしましょう。三俣山を背に、目の前には大船山、大船山、平治岳……くじゅうの名峰に囲まれた贅沢な場所で、「次はどこに登ろう」と考えるのもわくわくしますね。
ホット一息、至福の時間
いよいよ法華院温泉へ!
ゆっくり休憩したら、いよいよ本日の目的地・法華院温泉山荘へ。
爽やかな風が吹く草原でコーヒータイムを過ごしたので足取りも軽い♪。 ゴールは目の前です。
坊がつるから木道の先には法華院温泉山荘が
標識も所々に設置してあるので安心です
奥地にある山小屋で至福のランチ&温泉 リラックスタイム
法華院温泉山荘に到着! ちょうどお昼の時間に合わせて歩いてきたのでお腹もペコペコ。牛丼と迷ってしまうがこの日はカレーをチョイスし、談話室でお昼休憩に♪。その後は、お待ちかねの温泉タイム! じんわり体を温めながら、くじゅうの自然の恵みを肌で実感する至福の時間を過ごしましょう。
山の奥地で温かいご飯が食べられる幸せ
カレー 1,000円
“山小屋だんご”はあずきと芋の2種類
I:法華院温泉山荘
坊がつるの北西稜に位置する山荘は、鎌倉時代を開基とする九重山法華院白水寺として栄え、天台宗の一大霊場でした。明治以降信仰の山から登山の山へと変化する中、山宿へ。湿原を望む1300メートルの高台、九州では最高所に湧く温泉で浴室からは大船山、平治岳が眺められ、浴槽には源泉かけ流しの単純温泉があふれています。
「はじめてのくじゅう」2つのコースをご案内しましたが、いかがでしたか?
「いつか登ってみたい」と思っていたなら、きっと今がはじめどき。
ぜひ、「はじめてのくじゅう」へ足を運んでみましょう。