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2022.03.06

インタビュー 国本真治さん(サウンターマガジン発行人 )

輝いているあの人にフォーカスし、現在に至るまでのルーツをたどる“ROUTe PEOPLE“。第3回目は、屋久島に移住し「サウンターマガジン」を発行する、(株)キルティ代表の国本さんに話を聞きました。

東京の出版社を退職後、移住先の屋久島に宿と出版社を立ち上げたこと、移住した理由、これからやりたいことーー。その胸のうちを熱く、静かに語っていただきました。

 


「リスクを取らないと未来は開けないと思う」

サウンターマガジン発行人 国本真治さん

1975年大阪府生まれ。ファッションの誌「WWD JAPAN」の広告マネージャー、カルチャー誌「STUDIO VOICE」のプロデューサーとしてキャリアを重ね、2018年独立。屋久島に唯一の出版社『Kilty Books』を設立。また、ヨガスタジオを備えたホテル『アナンダチレッジ』を運営している。

震災後に訪れた屋久島。家族で移住を決意した

国本さんが屋久島に移住されたきっかけは?

大阪時代の友人が夫婦で屋久島に移住していたんです。それで東日本大震災直後に遊びに行ったんですけど、自然いっぱいだし、すごく良くて、子育てにもいい環境だと思いました。でも急に移住するわけにはいかなかったから、自分は会社員をしながら、まずは妻と子どもを先に移住させたんです。そしてヨガスタジオを備えたホテル『アナンダチレッジ』の開業準備を進めながら、僕は東京でサラリーマンを続け、2018年に移住・独立しました。

屋久島発の『サウンターマガジン』はどんな雑誌ですか?

好きな世界観を持つ人たちと繋がり、コミュニティを形成したいと思って創刊しました。屋久島発信ではありますが、旅や文化、生活などの情報は、屋久島に止まらず、世界各国の情報を発信。旅のドキュメントマガジンというのがコンセプトです。サウンターマガジンってカルチャー誌に分類されると思うんですけど、年代や性別に関係なく、趣味嗜好性で読んでいただいているのかなという印象がありますね。

 

リスクを取らないと未来は開けないと思う

創刊号は養老孟司さん、2号目は山岳カメラマンの石川直樹さん、3号目はアーティストのコムアイさんなど、著名なメンバーがたくさん参加されてらっしゃいました。

僕が以前東京で働いていたからツテがあったという方ばかりではなく、出ていただきたい方にオファーしているだけなんです。先日は著名な女優さんにオファーしたんですが、それはスケジュールの都合でNG。本人直筆で、お断りのメールが届きました。ダメな時はダメだけど、チャレンジすれば検討してくださることもあると思うので。なんでもやってみることが大切だって思います。

この時代における雑誌作りも大変かと思います。

コロナが蔓延した2020年春、ちょうど2号目が出たばかりのタイミングで本屋が一斉に閉まってしまったんです。大量の在庫を抱え、どうしようかと思いました。それでもAmazonで注文が入ったりと、なんとか回るようになって。何をするにしても大変ですが、それでもリスク取らないと未来はないですよね。

 

最新号、第4号表紙のモデルは音楽家の青葉市子さん

次号はどんな特集ですか?

「食でつながる旅」というのがテーマなんですけど、ちょっと昔の言葉でいうと地産地消、最近の言葉ならローカルガストロノミー。地域の食材を取り入れて新しい提案をする、というのを裏テーマにしています。次の表紙は音楽家の青葉市子さんです。料理が趣味だというから、サンカラホテル&スパ屋久島(屋久島随一のリゾートホテル)の料理長と一緒に料理を作るという体験をしてもらいました。

第4号の取材風景。食によって人と人とが繋がる旅を切り取り、編んでいく

周囲を緑に囲まれた、ホテル+ヨガスタジオ「アナンダチレッジ」

 

屋久島唯一の出版社でこれからやりたいこと

屋久島でお気に入りのスポットを教えてください。

サウンターマガジン3号目の表紙になった、「猿川ガジュマル」という場所は良いですよ。車を停めて5分で歩いて行けるんですが、意外と知られていないんですよね。あと僕、夏になったら毎日泳ぎに行くんですけど、南部の湯泊(ゆどまり)という地区に湯泊温泉という野天風呂があって、その先に島民しか来ないようなビーチがあっておすすめです。

島暮らしの良さ、大変さは。

大変さはあげればきりがないですけど、やっぱり人の繋がりが密なので、それがいい部分と大変な部分とありますね。ガソリン代が高いとか、送料が高いとか。でも島ぐらしって響きがいいじゃないですか? 東京ではみんなに羨ましがられるんです。自然いっぱいだし、子育ての環境的にはいいですよね。

これからやりたいことや手掛けているものはありますか?

今、キルティブックスで書籍を作っているんです。仮タイトルは「南洋のソングライン」屋久島に伝わる古謡「まつばんだ」に関するもので、島の80、90歳のご年配の方から聞き取り調査しているところ。屋久島に伝わるまつばんだは特別なもので、山岳信仰と絡んだり、文化と絡んだりしているみたいです。それを移住者である私たちが調査してまとめるからには、慎重にせねばと。出版はおそらく来年の春ごろで、ページも多くなりそうです。

旅のドキュメントを伝える、屋久島発のインディペンデントマガジン。世界自然遺産の離島である屋久島から全世界へ発信し、俯瞰した視点で世界を見つめる一冊。9月1日、全国の書店で発売。2,310円。