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2021.06.02

〈コラム〉vol.1 阿南大吉 「keep track(道を外すな)」

美しいフィールドをみんなで共有し、維持し、守りたい−−ROUTeにはそんな想いがあります。自然にちょっぴり想いを馳せて。ROUTe eyes は、自然の尊さを共有するコラムです。第一回の書き手は、発行人である阿南大吉。なぜ発行に至ったのか、そして、ニュージーランドでの体験を通して感じたことを綴ります。


vol.1「keep track」

2020年、私たちは雑誌発行に挑戦しました。創刊に関しては厳しい状況にあると聞いていましたが、アウトドアを日常的にやっていない方でもたくさんの予備軍がいらっしゃると思っていましたし、生活スタイルにアウトドアがもっと入り込めると信じていました。帽子やウエアなどでアウトドアファッションに触れている方、SUVを購入し夢を膨らませている方、家の新築やリフォームでガーデンアウトドアやクライミングボード設置を考えている方なども、大きな括りでアウトドアファンだと思います。

私達ROUTeは「暮らしとアウトドアをつなぐ」をコンセプトに住まいや暮らし、旅を提案しながら、美しいフィールドの紹介とアウトドアへの道すじをつくりたいと歩みだしました。

2020年10月10日に発行した創刊号

ニュージーランドでのこと

2020年2月、新しい事業形態を想像しながらニュージーランドへ出かけました。経由地のオーストラリアでは前年秋から山火事が発生。火傷したコアラを助けているニュースは記憶に新しいかと思います。消火するまでに九州の約5倍の山林を焼き、残念ですがたくさんの命が亡くなりました。トランジットの後、アウトドアパラダイスと言われるニュージーランド南島に到着。オーストラリアでの山火事により水蒸気をたくさん含んだガスが1,900キロ以上離れた南島山脈にあたり、場所によっては災害レベルの大雨を降らせていました。

 

フィヨルドが創る絶景。映画、ロード・オブ・ザ・リングの舞台になった場所

1週間ほど滞在し、最高峰マウントクック村へ。山全体が氷河に覆われ、シャイマウンテンのニックネームが付くほど姿を見せないことで有名ですが、この日は、そのクールフェイスを見ることができました。

山頂近くの黄色い氷河が気になって尋ねると、オーストラリアでの火事により風に乗ってきた灰がここに降ってきたと。この山火事も、地球温暖化により気温が上昇し雨が少なく乾燥したところに発火したのが原因と言われています。ニュージーランドでも温暖化により氷河減退は確実に進んでいます。そしてネパールやカナダなど、世界の有名なトレッキングの聖地に足を運んできましたが、どこの国でも氷の減少は年々進んでいます。

 

マウントクックを楽しむカップル。二人が座っている前を氷河解けの水が流れている

一説によると、オーストラリア山火事災害による煙が約12,000キロ離れた南アメリカまで到着しているといわれています。これでも分かるように世界はつながっていて、各国だけの問題でないことは明確です。私たちは地球人だという認識が大事になってきます。

偉そうなことを言える立場にはありませんが、自然の存在なしに私たちの生活は成り立たないのです。時を戻すことが出来ないから、将来に向かって自然へのダメージを極力小さく生活する必要があると思います。持続可能な経済活動SDGsはまさに地球人として守っていく必要があるのではないでしょうか。

氷河が解けた水が流れてきてつくったテカポ湖。湖の先にはマウントクック山がそびえる

世界の自然環境の変化は、自然を相手に遊び楽しさを伝えるアウトドア業界に身を置く私たちに直結すると考えています。

温暖化など環境問題への訴えもさることながら、より多くの方と一緒に自然を楽しみ感動することで、今まで以上に自然を愛し守る気持ちを育んでいただけるようなことを発信していきたいと思っています。

 

「keep track」とは

『道を外すな』、ニュージーランドではこの言葉がよく使われます。登山道の足場が悪いとき、少し草付きの高い所を歩きたくなるものだが、はみ出してはならない。なぜなら自然へのダメージを増やしてはならないからであり、人間は自然の中で遊ばせてもらっているのだから、という意味です。(阿南大吉)

 

書き手
阿南大吉
daikichi anan

1975年熊本県生まれ。「山とアウトドアの店シェルパ」代表。『共育・共生』の理念のもと、登山やアウトドアに関わる事業に従事。「アウトドアをもっと身近なものにできたら」と2020年10月アウトドアメディアROUTeを発行。